花と世界の人達と文化

 92年に開催された花の博覧会フロリアードは、10年に一度オランダで開催される博覧会です。02年度同様日本からは国土交通省(建設省)が日本庭園を、農林水産省が屋内出展ホールに日本ブースを出展しています。特に92年の時は、農林水産省が始めての海外出展ということも有り、力の入れ方も大きく、予算面でも02年にそれに倍近い金額が出されてたと思います. 私が日本ブースのデザイナーとしてオランダに渡ったのは92年のまだ寒さが残る3月でした。日本から送られて来る生花や鉢植えを日本ブースにデザインし、施工時に指揮するのが私の仕事でした。初めての海外出展と言う事もあり、当然今までの作業記録も作業経験も無く、正に手探りの状態でしたが、幸いにも私自信が世界蘭展などの博覧会施工の経験が有り、また他の施工スタッフは大阪の花博経験者ばかりという事で、施工自体はさほど支障もなく進める事が出来ました。がしかし慣れない海外作業で、支障をきたした事も多々あったのも事実です。しかし今から思えば、あの時の経験や沢山の人達との出会いが、その後の私の方向を決めてと思っています。 博覧会は6ヶ月間開催され、屋内出展ホールは期間中13のテーマ分けがされ、それに沿った装飾がなされます。日本ブースは私達日本人施工スタッフが5人とオランダ人スタッフ5人の計10人で構成され、会場閉館後に徹夜で作業します。オランダ人スタッフの彼らは、「いい物を共に作ろう」と積極的にコミニケーションを図ってくれて、私達の大きな力になってくれました。 ともすれば日本人は独特の社会や価値観を、そのまま海外に持ち込み、現地の人と問題を起こして反感を買ってしまいます。実際フロリアードでも、短期出展の為オランダ入りして来た人達との間で起きてしまいました。我々現地スタッフはその度に後始末に駆け回り、事態の収拾に努めました。それでも彼らオランダ人や会場で働く世界各国の人達は私達にコミニケーションを取って来てくれて、日本人にはない価値観に触れる事ができました。 文化を伝えるという事は、一方的に伝えようとしても伝わるものでもなく、お互い理解しようとする気持ちが大切ではないでしょうか。そこには、言葉や人種、文化、宗教、価値観を超え人間として通じ合えるものが存在し、新しい何かが生まれてくるのだと思います。私は、そのことを教えられた気がします。 また当時日本からの観光客もかなりの数にのぼりましたが、大半は大手旅行のツアーであり、その為に見学で時間は2〜3じ時間程度のもので、じっくりと見ることが出来ずに帰って行くものばかりでした。その程度の時間では会場内をゆっくり見ることが出来ず、また日本人が好みそうなアトラクションがあるわけでもない会場に、あまり良い印象を持てなかったんではないかと危惧しなものです。7ヶ月に及ぶ生活で、私はオランダという国が少し理解する事が出来るようになり、日本という国を外から見て考えることが出来ました。オランダは世界一の花産業国です。当時長引く経済不況と数々の社会問題が深刻化していました。それでも暮らしの中で花を楽しみ、飾る事が生活の一部となっているオランダ人からは、そんな暗さは感じられませんでした。私はそんなオランダの国民性が羨ましく思えました。日本では花を飾ることが贅沢だとする考え方がまだあり、なかなか生活に花という考え方が浸透していきません。以前カジュアルフラワーというキャッチフレーズコピーが出ましたが、ただ単に低価格競争に姿を変えてしまい、いつしか言葉自体も死語になってしましました。それでも、いつの日か、日本でも花を慈しみ楽しむ生活習慣が根付く日が来ると信じていますし、そうゆう運動をこれからも続けて行かなければと思いました。